トップページに戻る
4月日記へ 5月日記へ 6月日記へ 7月日記へ 8月日記へ
9月日記へ 10月日記へ 11月日記へ 12月日記へ
ちょっと危ない色艶都々逸
第1章 第2章 第3章
江戸の絵師と都都逸風日記 2010年
10月1日
今夜は、恒例のペナンで一番旨くないカニ屋というレストランで10人程が集まり一杯飲む日です。
別に、皆さんを召集しているわけではありませんが、このレストランの店の裏で中華系主人も店をチラチラみながら、一緒にガヤガヤと飲んでいます。
中華系のマレーシア人も一度友人と思いこんだら、どこまでも身内扱いしてくれるようです。
懐月堂安度「花魁と禿図」
かいげつどうあんどと読むそうです。
この浮世絵師は遊郭の女性をよく描いていて、少し角ばった顔と団子鼻と細い眼と口に特徴があります。
今でいう政争スキャンダル(江島生島事件)に関わる黒幕と見なされ、綱紀粛正という大義名分のもと遠島の刑になります。
いつの世も政治権力争いは次元の低いものですね。
江戸の絵師と都都逸風4
http://www.youtube.com/watch?v=B49QMjICssM
10月2日
日本は随分涼しくなった事でしょうね。
ペナンは時雨ですが、こちらに季節雨の表現(秋時雨等)は無いと思いますので、ペナン時雨と命名しました。
上村松園「夕べ」
清楚で気品のあるお嬢さんの姿を映しとっていると思います。
団扇を持って庭をそっと見た先は。。
10月3日
早朝はペナン時雨で、今日は少し遅めの散歩をし、帰り道にバナナの葉を1枚とってきました。
昨日、市場で大きさ15cm位のアジが新鮮そうだったので、10匹5RM(120円)で買い開いて三枚におろし、皮をはぎ、腹骨と中骨をとりコブ入り寿司酢に漬けこんでおきました。
身は殆ど細切れです。
朝からタイ米にもち米を少し混ぜご飯を炊きました。
これをバナナの葉で包んで押し寿司にしようという考えです。
喜多川歌麿「浮気乃相」
この浮世絵は数ある中でも好きなベスト3です。
手ぬぐいを絞りながら横に目をそらし乳房がこぼれているのさえ気にせず、ぽっちゃりとした顔の表情、こんな粋な女がいるなら、タイムスリップしたい所です。
10月4日
ペナンは天気が悪く波があり、遊帆(UFO)も揺り籠の中にいるようです。
日本は秋、曼珠紗華の花が綺麗な事でしょう。
葛飾北斎「砧図」
北斎の肉筆画と言われてます。
口で噛んだ手ぬぐいの線と着物の線を滑らかな線で描かず、彼女の気持ちが現われているようです。
10月5日
ペナンは雨季から乾季の変わり目で風が強く吹きます。
その為、ハーバー内の船は揺れが大きく皆さん苦労しているようです。
栄松斎 長喜 「雪中秋色女」
13歳のお秋は俳句が得意で詠んだ句を桜の木に、それが目にとまり、殿様の屋敷に招かれます。
雪が降る帰り道、ご褒美に籠に乗せてもらいますが、お秋は、父親を歩かせて、自分だけが籠に乗っているのが心苦しくなり、籠やさんがいない隙に父親と入れ替わり、父親の身に着けていた粗末な笠と合羽を身にまとい、そのまま家まで歩いて帰っていったのでした。
これが評判となり孝行娘と呼ばれます。
絵に描かれているお秋は13歳より歳がいっていますし、父は下僕の様に描かれています。
浮世絵の底辺に流れる風刺精神なのでしょうか。
10月6日
鈴木晴信「清水の舞台より飛ぶ美人」
常に新しい事に挑戦する晴信です。
傘を持って飛び降りる発想は落下傘のない時代に既に晴信は思いついていたのだと思うと日本のレオナルドダビンチと呼びたい所です。
10月7日
絵にも沢山の船が錨をおろしていますが、海の男は身の回りは全て自分でやります。
・掃除洗濯 料理に修理 一家にひとり うれいなし
と、宣伝文句はこれ位にして。。
歌川広重「名所江戸百景 月の岬」
この斬新な構図、部屋の右隅にうつる花魁の影絵、海に錨をおろす船と飛んでいく鳥達
全てが座敷の空間の存在感を引き立てています。
障子から声が聞こえてきそうで、人は描かれていないのに、人間臭さが感じられます。
10月8日
今日は旧暦9月1日、新月です。
ペナンの町は、9日間九皇帝祭でベジタリアンフードが並びます。
中華系では九匹の鯉は縁起物で神様を表しているそうで、家の壁に絵が貼られています。
鯉は滝を登って龍となるので、龍の子供と考えているようです。
鈴木晴信「見立琴高」
新しいもの好き晴信の事です、中国の周時代の琴高仙人も、美しい花魁に替えています。
手に持って読んでいるのは、恋文と私は考えました。
仙人話も晴信の手にかかると、色もの、人間の臭いがする所が好きです。
10月9日
昨日から始まった九皇帝祭のベジタリアンフードを食べてきました。
今日の句は 馬鹿がテーマです。
騙され続けた清姫、馬鹿にされ続けると恐ろしい怨念になりますので、殿方ご用心。
安珍と清姫のどちらが馬鹿なのかは私は分かりません。
しかし、私は安珍のように美形でも無く、若くも無く、金も無く、三無安全牌です。
鳥居清広「娘道成寺」
桜の木に釣られた鐘にまさに飛び込み、大蛇に化身しようという瞬間です。
美しいだけに怖さが強調されています。
10月10日
ペナンのベジタリアン祭りで屋台に行くと、お菓子も売っています。
このお菓子は米粉でつくったハクセンコウとかいう名前のお菓子そっくりです。
それにウイロそっくりのものもあります。
どこかで、日本とつながっているんでしょう。
歌川広重「庄野(白雨)」
激しい雨と籠かきが坂を上っていく様子、傘をすぼめて走る人、まるで目の前に本当に動いているように見えます。
雨を細い線であらわす現代の漫画の手法が既に江戸の浮世絵師によって編みだされていたんですね。
10月11日
ペナンは曇り、大潮の為ハーバーのポンツーン(浮き桟橋)が大きく上下します。
アジを捌いてヨーグルトにつけ、風の吹く日に一夜干しにしようと待っています。
待てば風は吹かないと、浮世のカミサンと同じく風の神さんも私の思う通りにはなりません。
或いは私の方がかってなのかも。。
福井県の大野の小芋は大好物です。
歌川国英「柳の下美人図(仮名)」
女性にしては首が太く女性の顔も歌麿のように整って見えません。
しかし、着物は丹念に描かれていて粋な姿と思います。
10月12日
遊帆(UFO)は猫がいなくなって、子トカゲ(体長50cm)が時々現れますが、物音をすると慌てて海へ飛び込んで逃げて行きます。
ユーモラスな動きで可愛い奴です。
カアチャントカゲは体長1.5m位ありますが、表情と仕草が人間っぽい所があり、暫し睨みあいをする時があります。
堂本印象「木華開耶媛」
日本神話に出てくるコノハナサクヤ姫ですが、官能的に描かれています。
どこの国でも神話というのは同じような話になるんですね。
逆に言うと、不滅は美しくないという事になるのでしょうか?
9月13日
朝ゴミ拾い散歩の帰り道、まず、先陣をきり雷の神様が派手にピカ、ゴロと凄く元気に暴れます。
2番手は風の神様が風速15ノットで吹き、木は枝をしならせ、野の草は一斉にお辞儀しています。
最後は雨の神様、バケツをひっくり返したように降ります。
南国ペナンの神様は忙しいのか、1時間もしないうちに、次の受持ち場所へ行ってしまいました。
私は靴まで水浸しですが、雨が好きなんです。
子供の様に水溜りを蹴って遊びながら帰ってきました。
葛飾北斎「雪中虎図」
浮世絵師の中でNO1の北斎、死の3か月前に描かれた虎は、自身が人生の主として生きてきた納得した思いと、死を覚悟して嬉しそうに去っていくような顔をしています。
私達に笑いを残しながら奥へ軽快な足取りで去っていくようです。
10月14日
旅のアルバム投稿に江戸の浮世絵と都都逸風は、「場違いの投稿」との伝言を頂きます。
空間の旅だけでなく、時の旅だと大目に見てください。
昔の風俗とその当時の人の心を描き表わした浮世絵を写真とみなしています。
どちらにしても素人趣味の事ですので笑ってお見逃しの程を。
日本はすっかり秋のようで、熱燗がうまいでしょうね。
こちらペナンは気候は同じように思うのですが、野に咲く草花と虫達は活気を帯びています。
野の花、虫達は季節の変化を知っているようです。
歌川広重「びくにはし雪中」
広重の良く使うブルーと構図はモネにも影響を与えたようです。
雪が降りシンとした江戸時代の町にタイムスリップしたように感じます。
仏教の影響で表向きは食べなくても、山鯨(猪肉)、鹿、熊、牛、鳥類は食べていたようです。
日本人は昔から雑食だったんでしょうか。
10月15日
昨日の昼はペナン、ジョージタウンのお寺で信者が奉仕活動で作っているベジタリアン料理(無料です)を食べましたが、家庭料理の薄味で、味もバラエテイに富んでいます。
「お前は神様と相性が悪いのに、何で、信者に紛れ込んでタダで食べてくるんだ?」
って、そんな野暮は仰らないでください。
神様は私の様な餓鬼に施しするのも、お仕事のうちだそうですので。
日本の神様は囲い込みした人だけだそうですが、こちらはまだ神様も大らかな所がありそうです。
渓斎英泉『時世美女競 東都芸子』
女の情念を描けば英泉の右に出る物はいません。
少し瞳を離し、下唇を厚くし、猪首、猫背の描き方に特徴があります。
武士を捨て浮世絵師となり、戯曲家、女郎屋を営み、何度も焼け出されと波乱万丈の人です。
水野忠邦の天保の改革で、綱紀粛正で浮世絵、芝居、遊郭等は逼塞してしまいます。
彼は格好の生贄の一人となりました。
お上の改革とはいつの世も政治の改革ではなく市民へ向けた物の様です。
10月16日
中華系友人が今年2月頃大腸80%程切り、今は人工肛門を右腹につけています。
定期検査の結果、良好との事、で自分が市場で牛肉を買い友人の料理屋のオヤジの所で調理し、祝いにウオッカをたっぷり飲みました。
顔色も良く、体も元に戻り、私よりよく食べ、酒も飲み、生命力の強さに呆れています。
歌川広重「浅草田甫酉の町詣」
わたしは本(吉原裏同心)でしか知りませんが、吉原で働く女性の控屋があったのが浅草田甫だそうです。格子窓から猫が外を眺めていますが、人間世界の駆け引きを笑っているかもしれません。
「わたしなら、鰹節でなびくのにニャ〜」
10月17日
昨夜、9日間の九皇帝ベジタリアン祭は山車を焼いて終わりました。
http://www.youtube.com/watch?v=_1Tcykn_f9I
歌川国貞「江戸自慢 五百羅漢施餓鬼」
この幌蚊帳は素晴らしい構図でまた、現代あれば欲しい位です。
前面の枕屏風に赤い着物は魔よけで、幌蚊帳に入り蚊から子を守ろうとし、肘をついて子供に乳を与える母の顔は慈愛に満ちています。
後ろに掛った絵は五百羅漢施餓鬼と書かれています。
浮世絵師国貞の目線は、寺で行う施餓鬼法会をシニカルに見て、母の心こそ施餓鬼だと強調しているように思います。
10月19日
上村松園
少し太った女性に、母性の豊かさ、優しさ、寛容さを感じます。
私も、「おとう」と呼ばれていた時は、
「速く大きくなってもらいたいわい。」
いつの日か子供が離れて行った時、
「あの頃、もっと抱いとけばよかったのにな。」
と後悔しています。
今、思えばその時がいかに短かったことでしょう。
10月20日
道にも色々ありますが、私は通ったことのない道を地図もなしに行くのが好きです。
それでよく失敗するのが、知らない所に行き、レンタバイクでホテルを飛び出して、帰る道が分からず、ホテルの名刺も持っていず何時間も探し回って、半泣きになった事がタイのチェンマイとスリランカで2度程あります。
歌川広重 「東海道五十三次・蒲原(夜之雪)」
広重の絵からは雪景色のシンとした空気が伝わってきます。
傘をすぼめ杖をつきながら下る人、雪を乗せた蓑を前かがみに重そうに歩く男女、左から急な山肌、遠くの雪をかぶった家に山、近景、中景、遠景と構図が素晴らしいと思います。
10月21日
日本は寒くなってきたようですね。
寒いのが大の苦手の遊帆(UFO)はペナンの暖かさに感謝しています。
ペナンに住む人の話では、
「日本と違って、凍死と飢死はない。」
という話です。
暖かい所ですから勿論凍死はないでしょう。
バナナに木の実、フルーツ、ココナッツなら、そこらじゅう自然になっているので、これをとってきて食べるか売れば生きていけるのかな、なんて変に納得しています。
日本では、これから寒くなると、公園等で住んでいる人は凍死するそうですが、どちらの方が豊かなんでしょう。
横山大観「霊峰飛鶴」
鶴がどこかを目指して群れて飛んでいる所に山からあさひが登ってきた瞬間で、自然の壮大さと生命の尊さを感じます。
10月22日
ここ数日、船内同居中のシロアリ軍団に宣戦布告し、各個毒ガス殲滅作戦実行中ですが、狭い船内で換気も悪いので、彼らと相打ち共倒れになりそうです。
森鉄山「兎図」
森派は前に猿の絵もありましたが、動物の絵が多いのですね。
ブチのウサギは夫で白ウサギのご機嫌をとっているように見えます。
10月23日
今日は江戸時代の淀川の旅です。
歌川広重「京都名所之内 淀川」
広重のブルーがきいています
船頭、船に乗っている人其々が違った表情をしています。
船頭が竿を力を入れてついていますし、その舟に何か弁当でも売りに来た小舟が横付けされています。
江戸時代に生きた人々が何をしていたか分かるのは不思議ですね。
10月25日
最近は修理モードとなり、遊帆(UFO)悪女に珍しく働かされています。
仕事の90%は前準備と掃除で、置き忘れた工具探しに時間が取られます。
遊帆(UFO)悪女を人で例えるなら、癌に罹っていて、私の腕では部分切除に修復と後治療しかできません。
あちらこちらへ転移するのは確実です。
肝臓移植の様に徹底した治療は随分お金がかかります。
葛飾北斎 「諸国瀧廻リ・美濃ノ国養老ノ滝」
流れ落ちる水を太さの違う直線で、しぶきを点で、川の波、崖の岩と木、そして滝を後に背を向けるふたり、ドラマを見ている迫力があります。
私は絵と写真の違いを考えてきましたが、写実的に描けば書くほど写真に負けるという事を思うと、北斎の絵が答えの様な気がしています。
10月26日
ペナンは乾季に入ったようで、雨が少なくその分暑いです。
昨日、アリが
「サムが蛸を獲った。いるか?」
大きさ30c以上はありそうですが、アリはモスリムの為、蛸は食べない。
貰って、私は船の修理に忙しく、隣の韓国船奥さんに料理を頼みました。
夜になって、蛸を湯がいて刺身にし、4人で食べましたが、新鮮で味は最高に旨かったです。
蛸を食べるのは我々4人だけで、ヨーロッパ系人も恐ろしがって見るだけです。
彼らには「蛸はうまくない」といってあります。
喜多川歌麿「雪の曳舟(銀世界)」
水野忠邦の綱紀粛正という大義名分で天保の改革がおこなわれます。
美人浮世絵第一人者の歌麿は、春本、裏本にも優れた物を残しています。
お上の力を見せつけるには絶好の生贄です。
手鎖の刑を受け、受刑後間もなく亡くなったそうです。
色のない雪景色を船を引き川を上っていますが、自分の運命を描いたものではという気がしています。
10月27日
昨日はペナンのジャスコに久しぶりに行きました。
少し買い物をし、レジーへいくと
「今日はポリバッグ(袋)ない日です。」
その為かお客は極端に少なく、従業員の方が多い有様です。
こちらでもエコという事の為らしいのですが、これで本当にエコになっているのかと思います。
何でも道に、川に、店中にポイポイ捨てるのが普通ですが、どちらにしてもゴミが出るならこの袋もごみ袋にでも使おうという心にならなければ効果は望めません。
そのうちに、エコでゴミが減ればよいと考えています。
東洲斎写楽「大谷鬼次の奴江戸兵衛」
久しぶりの謎の浮世絵師写楽の登場です。
この時代は出した言葉で無礼打ちがあったようです。
今の時代、無責任に言ったり批判するだけで、自分の言葉に責任を持って吐けているのだろうかと考えさせられます。
10月27日
船内から出てくる出てくる色んなものが。。
よ〜し!思い切ってあげちゃお!
という事で、
・カセットラジオCD付き
・ソニーハンデイカム8mm
・DVD多数
・変圧器
・パソコン部品
・服、帽子類
等々は、ハーバーでフリーと書いておくと直ぐに無くなります。
・コールマンケロシントーチとサーチライト12Vは漁師のインさんにあげる事にした。
以上は船の半分側(スタボーサイド)だけです。
未だ、ポートサイドと寝ている下は手をつけていません。
隣のイギリス夫婦の船も同じような事をしていて、お互いポンツーンに大きなファイバーグラス箱(2mx1m)を置きそこに船内から出して整理しながら中の修理をしています。
「これ1個じゃまにあわんな!」
「未だ、2つはいるな。」
何でも船内に持ち込み、ヨットマンは何か役に立つと思って捨てきれないのです。
葛飾北斎「雁と歌仙」
北斎の肉筆画の様です。
歌仙が飛んでいく雁をみていますが、自分の身の回りについて余分なものの為に旅することもできないという心境に重ねました。
「芸術は皆の者だ。」というような意味を仰られた岡本太郎さんの言葉で考えると、浮世絵版画は絵師、彫師、刷り師と分業で芸術作品を大量に世に出したという意味でも画期的な事だったろうと思います。
10月28日
今朝は久しぶりにペナンのジョージタウンの益和飲茶に行きます。
蝦を薄皮で包んだシュウマイ、サクサクした食感(多分タケノコ?)のシュウマイ、豚のミンチシュウマイと、私はシュウマイ系が好きです。
朝から近所の人が集まって老人ホームの様です。
一人辺り単価200円見当で50席あっても、昼までで回転率は悪いし、8人位働いています。
こんなんで、店はやっていけるのかなと思いますが潰れず代々やっています。
こういう近所に小さい店がどこにでもあり、小さな商売が成り立っているというのが、アジアの国の強みです。
日本は近所の商店街はシャッター通りになってしまいましたが。
・はながひくけりゃ 手はすぐとどく わたしゃ気のよい 御室桜(おむろはな)
鳥文斎栄之「桜下美人と禿図」
同じ遊郭の女性を描いても歌麿より艶麗さがなく、容貌は物静かで着物の優美な線香鳥文斎栄之の作風です。
多分べっ甲簪だと思いますが頭に沢山さしていますし、着物も重ね着です。
禿が世話をしても動くのは大変だったでしょうね。
10月29日
最近は船の修理の日々で、体は絶好調なのですが、船の狭い所を修理するのに変な体勢を強いられ右足首が腫れて歩けません。
変な体勢でも、色艶なくて済みません。
鈴木晴信「手拭掛け帰帆」
浮世絵師のダビンチと私がかってに呼んでいる鈴木晴信ですが、この絵も手拭掛けを帰船に見立てて面白いですね。
そこで私も負けないように帰り花に見立ててみました。
手が極端に小さく下手な漫画の様に見えますが、現代で言うと下手ウマでしょうか。
細かい所まで緻密に計算しながら、敢えて障子の線を意識してずらして描いてあるようで見た目なんか変だなと思います。
彼は時々見る人に自分が隠した意味解読の挑戦状を出しているようです。
そんな意味からも好きな浮世絵師です。
10月30日
歌川国貞「開帳の朝参」
後ろに描かれている絵には早朝の秘仏開帳に参詣する人々であふれている境内の様子が描かれ、下の絵は蚊帳を開帳し、寝茣蓙とこけた箱枕、口に紙を咥え髪を直す女の色っぽさ、後ろで眠りこける若い女、江戸時代の空気が伝わってきます。
浮世絵師はどこか反骨精神を絵に表わしているように思います。
10月31日
台風14号もそれて良かったですね。
私は日本周っている時台風に何度も逢い、インド洋でもサイクロンに逢いました。
台風は日本刀で切るが如く、サイクロンは大鉈で打ちのめすが如く印象を受けました。
台風は風速があり、サイクロンは湿気があり風が思いという感じでした。
どちらも特に洋上であまり逢いたくありません。
歌川広重「武陽金沢八勝夜景」
歌川一門は美人画の国貞と風景画の広重が図抜けていますが、この当時は広重は余り厚遇されていなかったようです。
あやふやですが、この絵は彼が当時流行したコレラで死ぬ1年位前のものではないかと思います。
景色奥行きの構図の素晴らしさに、広重ブルーを存分に生かした絵です。
国貞の多色摺りに対して広重のブルーと対照的ですが、理由があるようです。
11月の日記へ