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                    第3章 ちょっと危ない色艶都々逸   2010年

酒と風呂ありゃ

       浮世天国

          下手に欲だしゃ

             地獄見る



            …小原庄助さん


     知って喧嘩を

       することよりも

          知らぬふりして

             見る地獄


     いたと喜び

       追っても逃げる

           心住んでる

               青い鳥


     俗な都々逸

       テレビにゃ勝てぬ

           井戸端会議

              花盛り


     浅野のバカに

       教えただけが

         仕返しされて

           割りあわぬ


         …吉良の爺様



     政治の顔が

       見えない日本

          むじな変じて

             のぺらぼう

      
            …妖怪天国



    大人にならない

       ピーターパンは

         おまえの事じゃ

            あるまいか


     歳とりゃ誰も

       相手にされぬ

          こうなりゃ俺も

            自慰様さ


     抱いて愛さず

        眠りはさせぬ

          下段の剣は

             円をかく

           …眠り狂四朗



     借金かさんで

        落ちてく女(ひと)を

            網を張ってる

              スパイダーマン


       …それって町金の事じゃない?


     君の褥で

       観音様の

          開帳願う

             初詣


     日差し強けりゃ

        日蔭も濃いと

           それを覚悟の

               今の恋


      笠のお礼に

        極楽浄土

           連れていくわと

             いらぬ世話  

            
           …笠地蔵


     早くおきよと

       息子をたたく

         今朝は朝発ち

            仕事の日


     いつの間に抜き

       刺したのかしら

          気がつきや鞘に

              おさまって

             …座頭市


     母よ帰れと

        泣く大五郎

           俺もしたいと

              呼び拝む


         …子連れ狼拝一刀


      ついてつかれて

         ほど良いころに

            ふたり重なる

                  鏡餅


     一線越しましょ

        男女の仲も

           年越し蕎麦の

               絡み合い


     長いご無沙汰

       開かずの部屋に

          棒を振っての

             すすはらい


     朝な夕なに

        練習すれば

          夜の車庫入れ

               せがむ君


    ここは一番

       愛嬌捨てて

          憎まれ口で

             孫説教


           …お富与三郎


     孫はマクドで

       ハッピーセット

         あたしゃ財布が

            アンハッピー


     恨みますまい

        冬の冷たさ

           ぽとりと落ちる

                恋椿


     あそことここは

        ぴたりとはまる

           どこで違った

              恋はめ絵


      自分じゃ妻と

        思っていても

          男名前で

            メールする


      携帯とらぬと

         心に決めた

            震え呼ぶ身に

                 負けてとる


      初夜のひめごと

        おのこは震え

          やまとなでしこ

              リードする


      ワニに食われた

           左手よりも

              あのこ噛まれた

                  足痛い

                …フック船長


      口で言うより

        手の方がはやい

            妻を相手の

               時じゃない

                
              …柔


      夢を捨てたら

        命も終わる

           信じられない

               浮世でも



      今年に付けた

        色しみ落とし

           明日にそなえる

                 冬紅葉


      数をこなせと

        お見合い塾で

           あたしゃ犬なら

                君棒か


     逢瀬のあとで

         地蔵にあえば

            いやに目につく

                 卍の印


     首もまわらぬ

       今年の暮で

          娑婆ではしるは

                火の車


     恋の双六

       サイコロ振って

          あがるあがらぬ

               君の腕


      氷雨うらめし

       打たれて咲いた

           花のしずくは

                わが涙


      マレーで吠えて

       とどろきわたる

          褥雄たけび

            今いくぞ!


          …快穴ハリマオ


      ピノキオだって

        心を持った

           愛のない君

               木稔人


     男相手じゃ

       誰にも負けぬ

          マワシとられる
   
              妻にゃ負け

               
                …相撲


     恋の坂道

       ふたりで押して

          息が切れよと

              恋は恋


     好いたお方に

       ふられた日には

         おまえ相手の

             しのび酒


      じじばば捨てる

        姥捨て山は

           金でひきとる

              養老院


     あの世逝く時

        一言のこす

          おまえゆっくり

             来いという


     木枯らし吹けば

        奪われそうで

           君と口づけ

              つなぎとめ


     盗人稼業が

        可愛く見える

           今の日本の

              不思議さよ

  
             …石川五右衛門


     猿と呼ばれて

        天下をとった

          今のかしらは

              猿以下さ


             …秀吉


     夢まぼろしの

        下天を生きる

           持つべき夢の

              大きささ


             …信長


      とてもすきゆえ

       別れにゃならぬ

          君の信じた

           俺じゃない


      ゆげ舞い上がり

        ペッタンペッタン

           餅つく音が

              風呂の中


     川の流れの

          音さらさらと

             君の音はと

                問われた日


      惚れていながら

        惚れないそぶり

           意地と本気の

              せめぎあい


      しょせんこの世は

        男と女

           義理に裂かれる

                恋もある


     額に月光

       白覆面で

          バイクで急ぎ

             鼠捕り

            …月光仮面


      もとはひとつの

       貝ではないか

          ふたり重なる

             貝合わせ


     クルリ飛び乗る

        君の手のひら

           綱渡りさえ

             おてのもの

  
               …独楽


     出来たお多福

        おまえに似てる

           いつも笑って
   
               福がある

         
              …福笑い


      おまえお多福

       おれひょっとこさ

          ほかに何いる

              笑いだけ


     君の手の上

        舞うお手玉は

          おれの姿か

             運命か


     前にのせたり

        後ろでのせる

           はてはとが尖った

              上に乗る

  
             …けん玉


      氷雨しとしと

       髪まで凍る

          春を待ち立つ

              藁かかし


      大老以下の

        まつりの仕組み

           今と同じじゃ

              ないかいな


              …家康


      あたしゃ三日で 

        あの人落とす

           次の日あれば

               次の人


     心変わりは

        しないと言って

           肌のいれずみ

              あちこちに


     逢わずにいたら

         契もせぬに

           定めうらめし

               忍ぶ恋


     ぬしに惚れよと

        身を飾るとも

          出るにでられぬ

               籠の鳥


      あたま抜ければ

        イジメにあうわ

           横一線の

             やまとびと


     逢瀬の後の

        朝霜ふんで

           家路へ急ぐ

              君憎い


     三味も唄ない

        ひとの世なんて

           闇夜墓場じゃ

              ありゃせぬか


     遊びをせんと

       生まれたからにゃ

          情けないなら

             人でなし

    
             …平清盛  


     月下美人は

        わたしと同じ

            愛のしずくを

                待ついのち


     万にひとつの

        心変わりに

           入れた墨まで

                憎くなる


     ほぞをかんでも

        せんないものを

            もしももしもと

                くりかえす


     嘘を承知で

        騙されたいと

           言われりゃ本気

               なるあたし


     つもる恨みを

         さらりととかし

            こたつの中の

                ゆきみ酒


      別れて君を

        見守るよりは

            むしり取っても

                愛したい


      良いも悪いも

        すべてがあたし

            それを承知の

                恋ならば


      夜泣きする子の

        涙を拭けば

           可愛さ募り

               苦労消え


     浮世一杯

       生きてきたのに

           なんで地獄が

               あるのやら


      六道銭など

        必要ないさ

           小唄うたって

               三途川


      人生勝負

        ためらううちに

           ぬるま湯出られず
     
                 風邪をひく


     おまえにつられて

        覚悟を決めた

           骨になっても

              そばにいる


     ここは一番

        良い顔すてて

            閻魔さまなり

                 孫説教


     海が荒れよと

         必ず帰る

            可愛いおまえが

                 待つからにゃ


      あたしの煩悩 

         河原の石よ

             鐘鳴りやまぬ 

                  年の暮


     捨てたつもりの 

         煩悩なのに 

             拾うあの人 

                 又出逢う


     あなたついたら 

         わたしは鳴るの 

             ふたり褥の 

                 除夜の鐘


      夢をトラれた

         虎年(ことし)の浮世
   
             兎に角ぴょんと

                  うさぎ跳び


      一期一会の

         都々逸ひねる

             人の迷惑

                顧みず



     あなたあっての

         色艶なのと

             いつか逢いましょ

                  都々逸で   


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