元に戻る                                           1999年 6月


             南行記 No.2 大村湾を出て

6月27日 歌のように”長崎は今日も雨だった。” 針尾水道を通り久しぶりの東シナ海は大村湾と違ってうねりがある。
       大村湾は琵琶湖より小さいが波もほとんど無い。
       松島水道に橋がかかっているが勿論高さは20mはありそうで問題なく通過できる。
       池島は小さい島だが、頂上までアパートが建って島全体が町になっている。その南東に小蟇島 大蟇島 母子島と
       奇岩が連なっている。門のように真ん中が空いている。
       今日は三重式見港 N32-47-31 E129-44-24 へ入る。港内は広くどこでも係留できるが漁港なので大きなフェンダーと
       渡板が必要だ。港の前の広い道路を南(500m)のところに湯楽園(500円) もっと南(500m)にコインランドリー有り

   28日 伊王島 入港して右にポンツーンがあり、管理事務所で許可を得て上陸。
        ここはキリシタンの島で町に天主堂を見ることができる。
        約110年前に最初に木造で建てられ、昭和になって今の天主堂に建てかえられた。
        ここは実際、町の人々が使用中で中を覗くと質素ではあるが、こじんまりとして感じが良い。
        風呂は港を上がったところのルネッサンス長崎伊王島ホテルで310円で入浴できる。コインランドリーもホテルに有る。
        PHSでインターネット接続をしているのだが、電波が届かないところが多くなってきた。
        幸い今回は ホテルの公衆電話から接続できたのである。
         
        伊王島天主堂       

  29日 昨夜は台風の様だった。ここは南風の時はまともに波が打ち寄せてくる。
       発砲スチロールのフェンダーに又助けられた。
       そのフェンダーは1年前直径1mもあったのに、今は半分程に擦りへってしまった。
       港の近くに図書館があり、本は勿論 CD ビデオなどあり 1日中過ごす。

  30日 牛深港の天草灘側〔須口浦)入港。大潮の為 潮位高低差が3m弱あるけれど、渡板をハードドジャーにおいて上陸する。
       すぐ近くに天草温泉(350円)有り。ここはヨットには良くない。(漁船並の遊帆 UFO はどこでもokだが)
       半島を廻って牛深港へ入り、右の漁船溜り(市役所の前)は岸壁は低く階段になっている。
       伊王島から5マイルほど南に端島があるが、たくさんの建物は焼け落ち今は無人島のようになって不気味だ。
       一時は繁栄した島が何の事情でこうなったのか知りたいものだ。日本全国 島なのでこの島のようにならない様に祈る。
       
       焼け落ちた家が立ち並ぶ端島 

7月1〜2日 今年も半分は終わってしまった。新たな旅をスタートして1ヶ月になろうとする。
      最近はかかってくる電話もメールも、ほとんどなく一般社会から隔絶した修行僧のように孤独な生活になる。
      しゃべる人がいないのでテレビとかラジオに合鎚をうち、一人でしゃべるようになってきた。
      このホームページを見てくれる人のカウントがあがるのを見て、かろうじて自分の存在感を確かめる今日この頃だ。
      琵琶湖柳ヶ崎で自分のヨットに1日中いられる大塚先生なら、きっとこう言われるだろう。
      ”あんた、まだまだ修行がたりまへんな。”  
      雨のため、牛深市内観光に行く。
      サブマリン号にのって牛深海中公園へ行こうと思ったら、私1人だけだ。
      それでも出港してくれた。
      今は満潮時であるが船長は岩の30cm位上で、珊瑚、チョウチョウ魚、シマ鯛、メジナ等を見せてくれる。
      船長は2〜3日前の嵐で、水の透明度が悪いのをしきりにあやまるが、勿論船長の責任ではない。
      漁船からこの船に乗ったとき、いままでは暗礁を避けながら航行するのに、今度は近寄っていかねばならない。
      それが怖くて怖くてと話しておられたが、同じく船に乗る私は気持ちはよく分かる。
      潮の干満と波で高低差もあり 何の目印もないのに、あたかも船底を見ているかのように操船するのだ。
      牛深町は、ハイヤ祭(4月)を、阿波踊りの様に盛り上げて町起こしを考えているようだが、海と海岸の美しさ それだけで
      名所になっている。
             
      珊瑚 & メジナの群れ        ライオン岩(鼻毛まである)    親切なピンクサブマリン船長
  
  3日 エンジンオイル漏れがあまりにひどいので、串木野港でエンジン修理のため12日まで滞在予定。
      コインランドリーは町の方へ坂を登った左。
      風呂は国民宿舎さのさ荘があるのだが、泊り客だけで入れてくれない。
      何の為の国民宿舎か?私の場合 日本国民と思われなかったかものと、あきらめて近くの元祖湯〔250円)へ行く。
      帰るとき おばあちゃんはにこにこして10円かえしてくれる。
      ”おばあちゃん 看板に250円と書いてるで。なんで10円返してくれるんや?”
      と 変に抗議しても取り合ってくれない。

 4〜12日 今日は町内相撲大会があるので 昨日お友達になった勘場さんが見に来いとすすめる。
      串木野は相撲が盛んで、普通の町ならテニスコートなどが、あるのだがここは本格的正しい土俵がちゃんとあるのだ。
      試合に出る人も、義理で町内運動会にでる感じではないのだ。
      相撲取りの卵か、それらしき人達が真剣に勝負している。
      小さい町に、こんなに相撲取りの卵達がいるとは、驚きだ。
      勘場さんが後で船まで缶ビール1ダースを届けてくれた。
      どうしてこんなに親切なのか、勿論 御返しは韓国焼酎真露しかない。
          
      公園が土俵になっている      高校生ながら立派な体
      10日間も、串木野に滞在してしまった。
      その間バスで羽島方面の途中に白浜温泉(250円)があり通う。
      ここの湯の暑さ加減は最高だ。
      ゆっくりと長く入っていてのぼせない、大人が2人入れるくらいの大瓶が据えてあり、
      水風呂(地下からくみ上げた井戸水)になっているがまたこの水温がひんやりと適度で気持ちがいい。
      温泉好きの私には、毎日 極楽だった。
      明日からは、硫黄島の東温泉、その後中之島温泉へ 奄美大島の予定だ。
      こうしてみると、温泉調査旅行のようだ。   
    
  13日 本港&漁港に係船の時船首付けで後ろにアンカーを入れているのだが、あまり長くいたせいかアンカーが抜けない。
       エンジンで方向を変えて進んでももダメ、勿論モニターをつければこんな事にはならないのだが、狭い漁港では
       他船の迷惑になるので、つけることができない。
       あきらめて、泣く泣くアンカー投棄を決意、水だけを貰って気を取り直し元気に出港だ。
       海上で貨物船とすれ違うとたいていこの遊帆 UFO を見に近寄ってくるのでお互い顔は見えないけれど、
       手を大きく振って、挨拶するのである。
       相手は大きな船のため遊帆 UFO はしばらく引き波に揺られる事になる。
       けれど、お互い航海安全を祈って気持ちのいいものだ。
       無風のため枕崎港へ入る。
       風呂は駅の近くに枕崎温泉有り。
       今回のお薦めは下記の店、旨いし安い、枕崎にきたらこの店で〜す。
       和幸  枕崎折口町19番地 tel:73-2455 水曜日休日
       お薦めメニュー:アジの刺身 〔絶品) めひかりの唐揚〔絶品) 蛎酢 たこのわさび漬けなど

  14日 エンジンスタートするが、セルモーターが回らない。ハンマーで軽く叩いて目を覚まさせると動いた。
       寝起きが悪いらしい。
       港を出ると、昨日かすんでいた開聞岳がまったく見えない。
       西からの風 遊帆 UFO は6〜7ノットで走る。
       久しぶりの黒潮だ。紫がかった青(語彙に乏しいので色の名前はわからない)の海を進む。
       トビ魚が慌てて逃げる見なれた風景だ
       2年前は この海域でイルカの群れに出会ったのに今回はお目にかかれない。
       2時間ほど機帆走後帆走にするが5ノットほどで快走する。
       硫黄島に入港するが、海が赤い。噴火の鉄分が海に流れているらしい。
       上陸後 自転車で東温泉へ出かけるが坂があり約30分かかった。
       帰りは又自転車を30分こいで帰ってきたので汗だくで もう 何にもならん。
       この島は日本では珍しく、人力より自然力のほうが勝っている。
       道路も植物が侵略してきているし、土石流で道路も寸断されている。
       硫黄岳は噴煙を吐き人を寄せ付けない。
       東温泉は海に面してあり、湯は酸性透明でこんなにすばらしい温泉は、温泉調査隊長の私は
       勿論この温泉を一番に表彰しようと思う。
       昔は ここは、島流しの島で公民館には歴史が書いてある。
       何年か前 中村勘九朗とかいう役者がきてこの浜を舞台に演劇をしたとかいうのが島の自慢らしい。
       公民館にも風呂があり、地元の人はここに入る。
       風呂上りのおばあちゃん3人が、かしまし娘の様にしゃべっているので、その中の別嬪さんに年を聞く。
       ”ワタシシャ 72になるがね〜”
       ”へ〜 お元気ですな”
       ”なんの ここじゃまだ若いほうじゃがね ホ、ホ、ホ、”
       大自然に囲まれているせいか、年をとってもしおれてなんかいない。
       港に2件ある商店の前のほうの店の主人が港湾長で、7月31日のMISIMA CUPヨットレースがあり、ここがレース後の
       会場になっていて、たくさんのヨットがくるのだと自慢していた。
                
        頂上はいつも雲の硫黄岳       噴煙をあげる硫黄岳          すばらしい東温泉

  15日  やはりセルモーターがかかりが悪い。屋久島で修理しよう。
       この島は硫黄島と違って噴火で山ができたのではなく、 隆起により山ができたそうだ。
       標高約2000m、そのため山を上る雲が雨をふらすので年間降雨量8mというからすごい。
       勿論、楠川温泉(硫黄泉)へ行く。
       1日山登りコースがあるのだが、歩くのがにがてな私は遠慮しとこう。
       その代わり観光バスで行こう。
  
  16日 半日観光バスに乗る。いつもは、海を行くのだが今日は樹海を行く。
       紀元杉 千尋の滝 植物園 屋久島サル等 盛りだくさんに観光案内してくれる。
       さすがに 杉林は壮観だ。
       昔はお上に税金としてこの杉を山から切り出していたのだそうだがその苦労は大変なものだったろう。
       屋久島は水がうまいので、遊帆 UFO も水をいっぱい補給した。
       
     紀元杉樹齢約3000年     屋久島サル            花と蝶              千尋の滝
  
  17日 セルモーターの分解掃除は終わり、10:00宮之浦出港 15:00流していた仕掛けに しいら(55cm)かかる。
      魚がかかるなんて 全く珍しいのもいいとこだ。このしいらよっぽど腹へってたか、運が悪かったかだろう。
      煮つけにしたが、あまり旨くはない。
      18:30 イルカに遭遇、船首の前を遊帆 UFO の速度に合わせて泳いでくる。
      腹を上に向けてこちらを見ている。
      ”どんな奴が 乗ってんねん。いっぺん顔見といたろ。”
      という感じで確かに意志を持ってこちらを見ているように思える
      慌ててカメラを取りにキャビンに戻る。いるかはなかなか写真にとるのが難しい。
      好奇心旺盛で、人間以外で遊びを知っている動物だそうだ。
      遊び心を忘れ勝ちな現代日本人にイルカから笑われないようしたいものだ。
      19:00 東シナ海に夕日が沈む。
      19:10赤とんぼがたくさん船に休憩にくる。
      陸から70kmほど離れているのにこんなところに赤とんぼが飛んでくるのは、昆虫は特殊な能力を持っているからだろう。
      20:00月も沈み真っ暗になり、雲の間から星がたくさん輝いている。
      今は見える限り海で、見渡せる範囲にいる人間は私だけだ。
      1人でオーバーナイトで航行するときは、できるだけ昼に寝るようにしている。
      キッチンタイマーを首からぶらさげて、時間をセットして鳴れば起きるようにしているが、未熟者の為、5分くらいで
      すぐに我にかえってしまう。
      海では、見渡す限り船がなければ、1時間寝てても大丈夫なのだが。
      そのうち 目覚まし時計を何個もセットしないと起き無いようになると思う。
      まだまだ、修行が足りまへん。
       
  18日 風向きが真正面で黒潮の流れに逆らって航行しているので3ノットしか出ない。
      袖岡氏が奄美から乗ってこられるので13時ごろ待ち合わせしているが、大幅に遅れるだろう。
      2回目の夕日を見ることになった。
      入港手前で潮目の悪い所があり大揺れする。そのあと突然エンジンストップ。
      原因は燃料タンクが汚れているので、フィルターに目詰まりしたのだ。
      名瀬港到着時間 23:00  航行距離 140マイル 36時間かかった。
      名瀬港から南歩いて10分 バスセンターがあり 一階がコインランドリー
      郷土料理 みずま お薦めメニュー 鶏飯(けいはん)  川えびの唐揚 黒糖焼酎
        
      釣り上げたしいら        船首を泳ぐいるか       いるかがジャンプした後の水しぶき     東シナ海夕日

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