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    82番   年末年始の御挨拶       2006年

12月 日本に一時帰国して半年になろうとしている。
    糖尿病見習いのカミサマに連れられて、筋金入り高血圧の私も医者に行く事になった。
    普通血圧の上はは200近い数値なので、医者で計っても正直に同じ数値が出るのである。
    高圧剤を飲む事と体重を減らす事、塩分を控えめの3重要宿題を医者から言い渡される。
    ここの所体重は増え気味で86Kgs程になっていたので、目標72Kgsにして、やる気を固めたのである。
    近くの山に登り、食事を制限して1ヶ月程で7Kgs減となった。
    家の近くに居合道場があるのをインターネットで見つけた私は早速見学に行く。
    私の場合、来年春には又船に戻るのでそれまで習いたいという勝手なお願いであるが、
    先生は、快諾してくださるのである。
    学生時代7年間剣道をやっている時に、居合も習っていたが、もう、40年も経っているので
    全くの初心者である。
    太刀筋も決まらないので、夜に近くの真っ暗で無人の公園で素振りをしていると、警官が来て注意をするのである。
    銃刀法違反なので止めてくれという事である。
    勿論、銃刀法違反になるような物ではないが、日本は何とも情けない世の中になったものである。
    警告をする警官にも、注意が必要な社会にもである。
    政情不安か戦争時の戒厳令下の様で、夜は早く家でおとなしく寝るようにという事らしい。
    恒例の干支の豚に変装した積りであるが、今年はそのままでもいけたようである。


 Merry X’mas & Happy New Year 2007

    

2月始め 後、1ヶ月と半分位でペナンに戻る事になるだろう。
    第二番目の孫は女の子らしく、3月末には誕生予定らしい。
    顔を見れば、離れがたくなりそうだが、もう、1年も海から遠ざかっていると、おかしくなりそうである。
    私は海に浮かぶ浮き草が性にあって入るようである。

3月始め 後1ヶ月と少しで、船に戻る日が近づいてくるが、自動車免許の更新をしなければならない年らしい。
    警察に電話して詳細を聞いてみると、更新日の1ヶ月前から更新ができるが、それ以前だと、たとえ1日前でも
    有効期間が5年の所が3年になるらしい。
    かって、航海中で長期間日本を離れていて更新期間が過ぎてしまい、免許無効となり、再度、試験を受けなおした経験がある。
    本来、身についた免許に有効期限があるのがおかしいが、警察関係にしてみれば、更新期間を作ることにより、
    莫大な手数料が入るのであるから、止められないだろう。
    もし、交通安全という大義名分だけなら、手数料4000円も取る必要が何処にあるのか不思議である。
    政治屋が適当に決めた法案を梃子にして役人が利権を拡大していっても、お上に逆らわないおとなしい国民の一人なのである。

    医者と薬に頼らない高血圧治療の為に、塩抜き食事制限と運動(歩き)を毎日実行したので、76Kgsまで体重が落ち、血圧も160位になったようである。
    昼は毎日蕎麦を自分流で打っていると、最近は何とか旨い蕎麦をつくれるようになってきたが、未だ、蕎麦うち名人(谷口さん)の蕎麦にはならない。
    材料もそば粉に水だけで、何も加えないのに毎日味が違うという面白さにすっかり嵌ってしまったのである。
    道具といっても、包丁位で麺棒などはホームセンターで買った安い丸い棒を使い、麺伸ばし板はテーブルの上で代用している。
    コマ板という麺切り時に使う板も同じくホームセンターで買って自作品を使っている。
    
    国から年金の掛け月数について確認の葉書が届いたので詳細を聞きに行く。
    私の場合、未だ7年間程月数が足らないという事らしい。
    保険証納付の領収書も無ければ、国民年金手帳も無いので反論のしようも無いのである。
    大学卒業後、波乱万丈、浮き沈みの激しかった人生なのでこういう結果は覚悟の上である。
    結局は自分の事は自分で処理するより無いという事であり、プータローの生きていける場所は広い世界に何処かある筈である。
    人生最後の身の処し方の覚悟を固める日となった。

4月始め 日本滞在の大きな理由の一つである二番目の孫(女の子)の顔を見ることができた。
    小造りの顔に長い手足、シミ一つ無い綺麗な顔を見て、この子は将来美人になると感じる所は早くもジジイ馬鹿になってしまった様である。
    来年の干支恒例仮装写真挨拶では上の登場人物にもう一人増える事になる。
    いつの間にか、おとうからジジイに変ってしまって、家族の中で遊んで貰えるのは孫(男の子)だけとなってしまった。
    今女の子の孫ができたからには、トーマス、ゴレンジャーだけではなく、ままごとにキテイちゃん等も下調べしておかなければならない。
    こういう状況になってくると私も勝手気侭な海上生活を続けられなくなるので、今から未だ3年位は1年の大半は海の上に浮かんでいようと考えている。
    何十年か後に、ジジイはとんでもないプータローだったと言われるように。

    携帯電話会社の社長が、社員に子供が産まれたら報奨金を出すというニュースを見たのである。
    報奨金も子供の数により違っていて、数人目からは何と500万円程支給する様な事であった。
    少子化の時代と世間で問題視されている割に政府から、この会社社長の様な思い切った策は出されていない。
    一企業が行う英断に他企業も見習い、社員に愛社精神を求める前に社員を愛する事を行うべきである。
    美しい国、愛国精神を求めるなら、この会社の様に国民を愛する所から始めるべきである。
    国民の僕という顔をしながら、国民の見えない所で旨い汁を吸う害虫も大量発生する前に殺虫剤で早々に駆除して貰いたいものである。

    去年の12月から習い始めた居合だが、もう暫くすると長期休みとなってしまうので、習った事を思い出し一人練習に励むのみである。
    年が行くと習った事は直ぐ忘れてしまうのだが、頭で考えているうちはまだまだ道は遠いのである。
    今回飛び込みで道場を訪問し、豊剣会の木村先生に解り易く理論的で気品のある居合を教えて戴けたのは幸運であった。
    船に居合刀を持って行き一人練習に励む積りである。
    今、習っている顔ぶれを見ると、若い女性とオジサン(シニア寄り)という構成であり、若い男性というのがいないのである。
    その中にスイスからの留学生で空手も習ったという頼もしい女性がいる。
    日本語も巧く、武道にも関心があり熱心に練習しているのは微笑ましい。
    是非とも、武道の真髄を極めて貰ってアメリカ映画の間違った武道精神を直して貰いたいものである。
    所が彼女の日本滞在ビザが切れると不法滞在という事にもなるというのでビザ延長の手続き努力をしているようである。
    そんな中、イラン人一家の不法滞在で強制退去という事になったが、娘さんだけは大学進学の為に日本に残る事になったというニュースがあった。
    娘一人を残して日本を去らなければならない親の気持ちは如何ばかりだろう。
    学費に生活費はどうするのであろう。
    真面目に勉強している若い外国人を特別措置をとるべきである。
    彼らが自国に帰りリーダーと成り、要人となり社会貢献をする時に日本の文化&人的交流は大きな決定的要因となるのである。
    日本入国管理事務所は外国人に厳しい所であるが、彼らにすれば、法律通りにやっているという事だから、結局は政治屋の質の低さという他はない。
    地方統一選挙で宣伝カーに乗って”お願いします。お願いします。”の連呼だけには白ける以上に腹が立つのである。
    
    家の近くの山道を探検するのが面白い。
    知らない道を見つけるとこの道は何処に続いているのだろうと興味が沸いてきてドンドン登って行くのである。
    今日も、鶯の呼び声に誘われて苔寺の奥の道を川に沿ってママチャリを押して登っていくと、空気は澄み切り、緑の世界に入り込む。
    所々に椿とツツジ、水仙等が咲いているし、名前の知らない小さい花びらを付けた草が道端に生えている。
    2時間登って川の水を飲むと、甘いおいしい水である。
    殆ど、自然の中にあって、人工物(川の補強工事、崖の補強工事)の違和感は興ざめである。
    それに比べて、自然に朽ちた木や、岩はどうしてこんなに美しいのだろうか、人間は作品造りでは自然の感性に勝つ事は出来ないようである。
    登りは山道をママチャリを押して上がって3時間、さすがにお腹が減ってきたので、ママチャリに乗って一気に帰る事にする。

5月  遊帆UFOに戻る日まで秒読みとなった。
    この航海記を書き始めてから、1年近くも船から離れたのは始めてである。
    今日は天候が悪く、風速15ノット位の風が吹いている。
    窓の直ぐ前から竹やぶなので、竹が強風に煽られてしなっているのが見えるが、時々、パンという折れる音が聞こえてくる。
    風を見ると、一杯に風を孕んだセールを連想するのである。
    遊帆UFOに帰ると、又、いつもの問いが出てくる。
    ”何の為に一人でそんな事やってるの?”
    山頂を目指す登山家なら、かっこよくこんな言葉を吐くだろう。
    ”そこに山があるから”
    ヨットの記録挑戦者なら、
    ”無寄港世界一周に挑戦”
    ”単独世界一周”
    等などである。
    私は、ゴロゴロダラダラ海上ホームレスで自分の行きたい所に行き、そこが気に入ればアンカー降ろし飽くまでいるというだけである。

    先日、強風の日に風を孕んだセールを私が連想している時に、琵琶湖でヨットの転覆事故があり67歳位の男性が水没行方不明になったらしい。
    テレビの救助場面を見ると、警備艇が近くまで来ていて、転覆した船の大きさは17m位のセンターボーダー式の様である。
    後で聞いた話だと、警備艇は救命具を投げたがロープが短く彼の所まで届かず、再度回頭させている間(時間にして20分位かかったらしい)
    に男性は琵琶湖の底に沈んで行ったという噂である。
    私も琵琶湖で練習の為に気象条件の悪い時に出てセーリングを経験した事がある。
    事故が起こる状況を想像すると、琵琶湖の北側は比叡山からの吹き降ろしで、瞬間的に大変な強風が吹く。
    波は1.5〜2bは立つときがあるし、波の波長が湖なので短いのが特徴である。
    その為に海の荒天時の様に波に巻き込まれるというのはあまり考えられない。
    瞬間的な強風にセールの風を逃がすのが遅れた時には横転する可能性がある。
    その為には、メインセールを瞬間的にフリーに出来るようにメインシートを準備しておく必要がある。
    そして何よりも風に逆らわず追っ手で逃げていくのが安全である。
    最も危険な状況になるのは、方向転換の時である。
    ヨットは同じ方向で進んでいるときは限界に近づいても意外と横転しないものである。
    荒天時になると誰でも早く安全な所に逃げ込みたいので、方向も船足も無理をするようになるものである。
    そんな時は自然の猛威にジッと我慢するしか方法が無い。
    今回の場合、警備艇が近くまで寄っていながら、どうして誰も飛び込んで救助に行かなかったのか不思議である。
    船に乗っている者は、誰か救助を求めている人があれば本能的に体にロープを巻いて飛び込む筈である。
    もし私が警備艇に乗っていたら躊躇わずそうする。
    これは、警備艇、救助艇を問わず、船に乗っている者の当然の行動である。
    今回、発見時遭難男性は未だ生存を確認していたのだから、警備艇の責任は重大であり、救助できなかった事は恥ずかしい行動である。
    勿論、海に出て行く者は自己責任であり、事故が起こらないような準備と起こっても自力で生還するあらゆる方法を考えておくべきである。

    ペナン出発の2日前に、カミサマが転んで小指と手首根元の2箇所骨折し、入院手術する事になってしまった。
    当然、出発日を航空券有効期間一杯まで遅らせ様子を見ることにしたのである。
    減量と血圧を下げる為に散歩を続けているが、嵐山までの東海自然歩道にも、地蔵院、鈴虫寺、苔寺、松雄大社、その他、多数の寺院がある。
    苔寺拝観は予約制らしく、門は閉じたままで、その他寺院は拝観料500円が平均価格である。
    日本の宗教は宗教法人ではなく、観光事業法人になっているのである。
    宗教が法人化している所が日本宗教の特徴ではないだろうか?
    観光事業で得た収入でも税金は掛からないのだろうか?
    人を救うべき所が拝観料で得た収入を救済の為にも使わず税金も支払わない宗教法人は恥ずかしくないのであろうか?
    その寺の門の掲示板に”拝観し綺麗な庭を見ながら自分の人生を考えてみよう”という様な意味が書いてあったのは最高のユーモアに思える。
    まずは自分の事から考えるべきであろう。
    タイの寺院では、坊さんが托鉢をし困った人々を救済しているし、勿論、拝観も無料である。
    マレーシアのイスラム教では、良くも悪くも政治の上に教義があるという宗教本来の姿である。
    日本の宗教は国家体制化に組み込まれて宗教とは言えない有様である。
    各宗教の絶対普遍の価値観の無い日本はその時の国家体制により、価値観が変化するのが常なのだが、現在、日本社会の重要価値観が見えてこないのである。
    何が何でも経済発展しなければ日本は沈没するという思い込みは、本当に幸福なのであろうか?

    京都市は条例で路上での禁煙を法令化するらしい。
    シンガポール、マレーシア(ランカウイ島)ではタバコの路上喫煙は高額罰金を支払わなければならない。
    最近のテレビで”もしタバコの値段が1箱千円になったら90%の人が吸うのをやめる”というアンケート結果を放送していた。
    政府も、国民の健康を本気で心配するならタバコ会社の圧力があろうと、税金が減ろうと、1箱千円か2千円にすれば良いのである。
    私の義理の兄もタバコを吸い続けて、喉頭癌で亡くなったし、友人にも肺癌の治療に通院している人がいる。
    健康に悪いという調査結果に自信があるなら、製造中止という措置を取るのは当然の筈である。
    もし、食品会社で少しでも健康に悪い物が混じっているというものを販売したら、商品回収、営業停止処分を政府はする筈である。
    タバコも同じではないのか?営業停止処分に出来ない問題があるのであろうか?
    プータロージジイには難しくて分からない。

6月1日 ペナンに戻る日が近づいてきたので、インターネット接続(ぷらら)に解約申し込みを電話でしたのである。
    この解約の経緯であるが、5月中旬に解約意向を電話した時、
    ”6月からの停止は6月になってから再度申し込みしてください” との事であった。
    それで、今日電話で6月5日解約申し入れると、
    ”会社の規定で月単位で解約という事になりますから、1か月分いただきます” との事である。
    ”それなら、何故5月解約意向の電話をした時にその事を言わないのか” と、問い詰めた所、
    ”いつ電話されましたか?誰の担当か名前は覚えていますか?” との質問であるが、こちらはそんな事いちいち覚えているわけはない。
    ”あんたの会社で分かるはずやろ” と、問い詰めると、暫くパソコンを操作する音がして、担当者と連絡日がわかった様子である。
    ”その時に、担当者から料金は月単位ですという主旨を言う社内規則になっていますので、6月5日に解約されても1か月分頂く規則になっています”
    と、頑張ってくるのである。
    料金は800円程であるが、ここで社内規則なる盾を消費者側に押し付けてくるのに腹がたつのである。
    どんな規則でもそうであるが、規則は強い側(権力側)に有利に作られているのであって、こちら側に有利な様には作られていない。
    もし、顧客側に立ち、良心的な企業なら、日割りで計算しますというのが筋である。
    担当者にすれば、会社の規則通りに仕事をこなして優秀社員なのかもしれないが、顧客からのクレームを社内規則で受け付けず、
    今後の社内規則改善にも取り組まないこの様な社員が会社を駄目にしていくのである。
    社員は規則通り仕事をすれば、客から何を言われようが、良心が咎めようが規則の後ろに逃げ込み嵐の過ぎるのを待てば一件落着、
    立場も給料も安泰なのである。
    しかし、何といってもトップの責任であるのは間違いがない。
    この様な、ケースは市役所でも、税務署でも、国の法律でも何処でもある。
    人が普通に考えておかしい事を規則、法律で縛っていく方法に抵抗する為に、プータロージジイは禿頭から湯気を出し、高血圧でコメカミの
    血管を膨らませながら、精一杯の文句と嫌味を言うのが関の山なのである。
    

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