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   71番 カンタンで船底塗装    2005年2月13日〜3月1日

2月13日 午前10時 Isaacに別れの挨拶をして、アンカーを揚げる。
     ランカウイ島の西側に出ると、風速15〜20ノット 波頭が砕けている。
     エンジンを止め、登り一杯の為、インナージブとメインセールでセーリングをする。
     ランカウイ島の北側10マイルほどの距離に、タイ側の島、ランタ島の西側を
     セーリングで進む。
     白頭鷲はランカウイ島のシンボルになっているが、プーケット島まで広く生息している。
     その白頭鷲が遊帆UFOのマストの前をユックリと回って飛んでいる。
     下から見上げると、体全体が白く、羽の所だけ、黒か茶褐色で綺麗な姿である。
     突然、舞い降りたかと思うと、水面すれすれで、ダツが水面を飛び跳ねるのを
     足で掴んで舞い上がっていく。
     見事な技である。
     遊帆UFOの姿に驚いて、ダツが水面を飛んで逃げるのを、白頭鷲は知っているのである。
     暫くすると、もう1羽同じように遊帆UFOのスピードにあわせて、僅か前方で舞っている。
     ダツが飛び跳ねると同時に舞い降りてくるが、今度はダツの勝ちである。
     3度目にやっと捕まえた。
     結局、ダツが飛び跳ねる5秒間が勝負の様である。
     何故か、先に鮮やかに1発でダツを捕まえて行った白頭鷲はオカアサン鷲で、
     子供が腹をすかして待っているので、真剣に狙いすましていた気がする。
     次の少しどじな鷲は、若いオスのような気がするのである。
     白頭鷲の鮮やかな技を見せて楽しませてもらった。
     それにしても、船がいない時はどこからダツが飛び出すのか、どうやって知るのだろう。
     ここタルタオ島は、ランカウイ島と同じ位の広さがありそうだが、開発は殆どされていない。
     多分、人口より、鷲の数の方が多いだろう。
     午後4時、006−38-258N, 099-36-890E のポジションにアンカーを降ろす。
     上陸しても、人はいないので、御飯を炊いて夕飯にする。
     Isaacのファンさんが、色々おかずを呉れているので、星を見ながら夜風に吹かれながら、
     飯を食うのであった。

 14日 朝10時、アンカーを揚げる。
     今日は、風が弱く帆走はできないので機帆走でいく。
     右手は、東北松島の規模を大きくした様な景観になる。
     石灰岩の岩ではなく、島になっているのである。
     切り立った岩肌にへばりつくように樹木が育っている。
     所々、雨と波に浸食されたのか洞窟になっていて、その洞窟に海燕が巣を作っている。
     形は、鋸のような島、海面に真直ぐ突き刺さったような島等、見ていて飽きない。
     エンジン1800回転で船足3.5ノット弱で、腹に一杯藤壺をつけた今の遊帆UFOでは
     これ位なもだろうか。
     カンタンの入り口にあるタリボン島で明日の上潮を待って行く事にする。
     ここは遠浅なので、岸に近づく事ができない。
     007−12−599N, 099−23−998E にアンカーを降ろす。
     今日で買っておいた氷が解けてなくなり、冷蔵庫は役に立たなくなるので、
     腐る物は料理してしまう事にする。
     残り物野菜処分となると、カレーか八宝菜だが、ベーコンがあるので、カレーと
     キャベツ1個をベーコンで煮込んでスープにする。
     スープの味付けは、醤油、胡椒,塩、ホンダシにする。
     これだと、朝晩火を入れれば3日位は持ちそうである。
     
 15日 朝10時アンカーを揚げる。
     第一番目のブイ(RED) 007-10-471N 099−270435E 
     第2番目    GREEN  007−11−908N , 099−27−973E コース20度
              RED   007−13−222N  099−28-483E      10度
              GREEN  007−14−809N  099−28−777E     40度
              RED   007−16−348N  099−30−118E    350度
              GREEN 007−17−282N   099−29−976E    345度
              RED   007−18−368N  099−29−671E    345度
              GREEN  007−26−876N  099−28−981E
      ここから先は川なりで進行方向にブイが見えるので間違う事はない。
      カンタンのハーバーマスター事務所の所が唯一デインギーをつけられる所なので、
      事務所の迎側にアンカーを降ろし上陸する。
      アンカーポジション、007−24−445N 099−30−377E 
      第一ブイから13マイル位あるだろうか。
      自転車でKertseang Shipyardへ明日の上架時間の打ち合わせに行く。
      ”MR.VIM、久しぶりです。”
      ”オバタサン、上架カーを用意して、場所を空けて待ってましたよ。
       所で津波はどうもなかった? 体は健康ですか? 相変わらず一人か?”
      と、矢継ぎ早の質問である。
      VIMさんも元気そうで、シップヤード内に自分の家を建設中である。
      明日2時、上架する事にして、町へ食事に行く。
      街中に入る川に面した方は、夜店の準備をしている。
      小さな町で、自転車で10分漕ぐと、1周できるのである。
      早速、タイで一番旨いと、思っているタイラーメンのオバチャンの所に行く。
      ”オバチャン、店開けてないのか?いつ、開ける、明日はどうか?”
      ”ダメ、正月で暫くお休みよ。”
      と、つれない返事である。
      ”オバチャン、わざわざここまでラーメン食べにきてるんやから、はよ 開けてな。”
      あんまり、気乗りのしない返事である。
      まあ、毎日覗くより他ないか。
      前回、3日だけ私と一緒に遊帆UFOへ連れてきて寝た子猫に会いに行く。
      途中で、片岡鶴太郎そっくりの手伝いがいる店のオーナーシェフ、中華の鉄人に
      バイクに乗って後から声をかけるられる。
      ”又来たか。久しぶり。”
      ”今、あんたの店に行こうと思っていたところや。”
      ”うちは、日曜まで休みや。”
      もう、ここは一体どうなってんのや。
      スーパーへ入って、オバチャンに子猫に会いに来たというと、奥まで案内してくれる。
      すっかり大きく、毛並みも綺麗で、体もしっかりしている。
      抱いてやると、ニヤ−と無く。
      鼻の頭に黒い毛並みが残っていて、私の懐で寝た時のぬくもりを思い出す。
      何処に行くのも、シャツの中に入れて、自転車でカンタンの市内を走ったのである。

  16日 朝から船内チェックをしていると、マストの下の配線が入っている所が、船体の軋みで
      ずれてきている様である。
      カタマランは、マストのりギンを締めすぎると、船体に負担がかかるし、緩過ぎると
      危ないし加減が難しいのである。
      折角上架して仕事をするので、できるだけ完璧にしようと思って、まず、不要配線を
      取り除く事にした。
      中を整理すると、内部をFRPで補強し、硬い材木で支えて、再度FRPで接着させる積りである。
      不要配線は取り除き始めると、綺麗になって気持ちが良くなる。
      やりすぎて、スイッチを入れても電機が流れないのでエンジンは当然かからない。
      2時には、満潮で上架するのに困った事になってしまった。
      Mr.Vimに相談すると、タグボートで横抱きにして持って来れば、と言う事である。
      その方が、手っ取り早いか、と仰せの通りにする。
      ワークショップのMr.Eggも一緒に手伝ってくれる。
      上架の段取りも3度目になると、スムーズである。
      引き上げると、直に、オバチャンが貝落としをやってくれる。
      私は汗だくになって、配線を整理したお陰で実にシンプルになったが、エンジンが
      掛からないだけである。
      こちらの問題は、プロフェッショナルがくれば、解決するだろう。
      洗濯とシャワーを浴びて、さっぱりした所で、自転車で町まで食事に行く。
      御飯に蝦と唐辛子炒め、オムレツで25バーツである。
      デザートに中国茶と、シュークリーム3個、もち米ココナッツ餡で10バーツの安さである。
      久しぶりにインターネットカフェへ行き、メールのチェックをする。
      最近はメールも少なくなり、カミサマからのメールも隔日位と寂しい限りである。

  17日 今日から、ヘルプにMr.サンを1日300バーツで手伝ってもらう。
      前回、テーリーが彼をヘルプに雇って修理をしていたのである。
      彼は、朝8時半ごろ来て、10時、昼休みと 3時に休んで、5時頃まで
      言った事をしてくれる。
      ラダーを外して貝落とし、ガタツキと両サイドのラダーの向きの調節をする。
      ラダーの傷んでいる所をFRPで修理し、船体を掃除して、マスキングテープを
      張っていく。
      荷物が増えたり、装備が増えたりして後が10CM位沈んでいるので、
      思い切って上の方まで船底塗装をする事にした。
      シレットドライブ(カタマラン用、上下可動)を、緊急時以外は揚げない様にして
      殆ど固定して使っている。
      理由は、重くなって、ドライブを挙げても水面下にあるのと、動かすと何かと
      問題が起こる、いい加減な作りの為である。
      お昼は、タイで一番旨いと勝手に決めているラーメン屋へ行ってみる。
      オバチャン、店を開けている。
      ”オバチャン、黄色のメンと、葛きりメン(これは私が勝手に葛きりとおもっているだけ)
      の、 スープの奴、2つな。”
      オバチャンは、ニタと笑って、頷いている。
      暫く待って、まず黄色のメンが出てくる。
      スープが何ともいえない上品な味で、旨みだけがスープになっている様なのである。
      何度、すすっても飽きないのである。
      夜は、モスリムのオバチャンのチキンライスの店に行き、焼き鳥も注文する。
      チキンライスはサフランとカレー粉をいれ、鶏と一緒に炊いた物か、炊いてから
      混ぜたものか、分からないが、これまた、大変美味なのである。
      他にも、同じチキンライスがあるが、御飯にしみ込んだチキンとサフランとカレー粉の
      一緒になった味が微妙に違うのである。
      帰りは、海岸沿いのナイトマーケットをブラブラ見学する。
      ここのナイトマーケットは町は小さいのに、いつも規模が大きく、移動遊園地から、
      ビンゴ、まである。
      一軒、石でネックレスやら、ブレスレットを作りながら売っている所があるので、
      色んな色の石をワイヤーで通して財布の紐を作ってもらう。
      最近は物忘れが酷く、シャワーをする時、棚の上に置き忘れるというのを何回もしている。
      その為、ダイビング用のプラスチックの密封ケースを首から掛けて肌身離さず
      と言う状態にしている。
      その紐が黒い編みこみ紐なので、濡れるれると暫くは気持ちが悪いのと、
      やはり不細工なのである。
      作っているオニイチャンは、几帳面な性格のようで、色の順番があるらしく、
      折角入れた所を、又、出して再度入れなおしている。
      よく見ると、ニイチャンは気を利かして、ワイヤーを2重に通してくれている。
      端止も2重に止めて、丈夫で綺麗なものが出来上がって850バーツだが、大満足である。
      ニイチャンに何度もアリガトウといって夜道を自転車を漕いで遊帆UFOまで帰るのであった。
  
   18日 引き続き不要配線の整理とわからない配線に番号を打っていくのに、
      サンに手伝って貰うと、仕事は速い。
      今までは、一人なので何度も電線を引いたり押したりして辿っていくのに、
      時間が掛かっていたが、2人だと直にそれそれと言う具合である。
      昼からは、サンには船底のプライマー塗りをやってもらい、私は船内の配線
      のチェックをする。
      日中になると船内はサウナの様になり、汗が出て座っている所が
      水溜りになるほどである。
      プライマーはJoton Jotamastic87 PartA 5Little & Jotamastic87 PartB 0.7little 
      混合して塗っていたが、遊帆UFO全体の60%位しか塗れていない。
      遊帆UFOの船底塗装は8〜10Litte必要な様である。
      同じものを探すが、無いので、 Hachem ESP009 Epoxy Primer を
      670バーツで買う。
      FRPのファイバーグラスクロス 7m 910バーツ レジン 5Little 
      1,000バーツを買って明日から船内の補強に掛かる。
      5時のサイレンが終業の合図で、ワークショップのニイチャンが
      ”オバタ、ビール飲みに行こう。”
      と、誘ってくれるが、私は未だ船内の掃除も出来ていないので今夜寝る事
      も出来ない。
      後片付けをし、寝れるようにして、体洗いである。
      何度も水を被ると、やっと生き返ったような気がするのである。
      夜は、自転車で町まででて、屋台の集まっている所へ行く。
      飲み物専門屋台へ行くと、オバアチャンと小学6年生位生の男の孫がいる。
      オバアチャンは、話が通じないので、孫が注文を聞いてくれる。
      レモンシェークを注文する。
      孫の男の子が勉強しながら、オバアチャンの手伝いをしていて、
      レモンを絞り、少しの塩と蜜と氷を入れてミキサーでかき回し、グラスに入れて
      持って来てくれる。
      このマルガリータは最高に旨い。
      ここのレモンシェークはプーケットで30バーツするのが10バーツと言う具合に、
      カンタンの物価はプーケットより安い
      各種ジャムのホットトーストを肴に、レモンシェークに持参のテキーラを
      入れて飲んで晩御飯にする。
      2杯飲んで、ナイトマーケットをふらついて、果物を買う。
      この町は、魚の荷揚げ港なので、魚介類は新鮮で野菜も豊富にある。
      皮肉な事に、新鮮な食材料がある所は、外のレストランで食べる方が安くて旨い。
      尤も、日頃ダラダラとしているプータロージジイが、こんなに働くと料理する気も
      起こらないのである。

  19日 太陽より早く目が覚めているので、7時には町中の市場まで自転車で散歩の積りで行く。
      町の真ん中に肉(牛肉、鶏肉、豚肉、内臓、ブタの顔まである)、魚、野菜、雑貨、衣料、
      その他何でも有りの市場がある。
      さすがに魚の水揚げ場だけあって、魚貝蟹類は新鮮である。
      野菜も、新鮮で種類も豊富で、Isaacがいれば、毎日市場で買ってパーテイができるのに、
      残念である。
      市場の横の、おかゆの店で、揚げパンと一緒に朝メシである。
      今日は、船底塗装はサンに任せて、私は船内のFRP補強にかかる。
      スタボー側が2〜3cm凹んでいる。
      ファイバーグラスのマットとロービングクロスを交互に貼っていく。
      遊帆UFOもバアチャンになってきたので、Speak(喋り)が多くなっている。
      船は全く人間と同じである。
      その文句の出そうな場所を、FRPで固めて、文句の出ないようにしていく。
      明日は、硬い材木を買ってきて、力のかかる場所を分散させるようにしようと、考えている。
      今日も1日良く働いたので、御褒美にレモンシェークテキーラ2杯である。
      帰りはいつものように、果物(今日はりんご、スイカ、ピーマンみたいな形をしているが
      味は、シャキシャキとしてホンノリ甘い果物)と氷を買って帰る。

 20日 朝から取り合えず船体の補強をする。
      やらねばならない事を気づいた時に手帳に書き出していくと、40項目位に
      なっている。
      船底塗装は、プライマーを1回塗り、アンチファーリングペイントを2回塗り重ねた。
      午前中は、まだしも、午後からになると、船内でのFRP補強作戦はかなりキツイ。
      グラスファイバーマットも無くなった事なので、最後の方は手抜き工事にする。
      夜は、中華の鉄人の店に行く。
      前回、働いていたタイの片岡鶴太郎はやめて、かわりに、いつもくびを傾けた
      ネエチャンになっている。
      そういえば、鶴太郎も首を少し曲げていたから、このネエチャンは妹かもしれない。
      オーナーシェフに、豚肉の小腸と、魚の浮き袋を指差し、料理方法は鉄人に任す。
      出てきたのは、豚肉の小腸はにんにく刻みと一緒に唐揚してあり、浮き袋は
      蝦、鶏肉、椎茸、香草をいれて、中国酢を入れたスープになって出てくる。
      味は、抜群である。
      私は、かって香港で食べ歩きをしていたが、引けを取らない腕であると勝手に
      太鼓判を押している。
      値段は、1品80バーツ程して、このカンタンの町では高級料理店になるだろう。
      壁には、父母の写真と、羅クン(君という字の下に羊を書く、意味は槍
      の様な武器を表すらしい)という金看板が飾ってある。
      父母は、中国からタイへ移住しタイに根を降ろしたのであろう。
      中国人とインド人とスイス人は、他国で根を下ろすのを苦にしない民族であると
      いう、独断と思い込みを持っている。
      中国人は特に、出身地の同属は国家の絆より強く、幇を作り纏まっていて、
      何処の国にいても、チャイナタウンができてしまい、結局中国になってしまうのである。
      遊帆UFOへの帰り道、いつも同じ家の前で道路を半分占領して葬儀をやっている。
      今日で、6日目位になるだろう、マージャン卓を囲んでいたり、ドミノをやっていたり
      夕飯を食ったり、酒を飲んだりというのが、毎日、毎晩なのである。
      寒い国なら、仏さんも腐らないだろうが、タイは日中の気温を考えればドライアイスを
      入れていてもおっつかないであろう。
      私は、このマージャンツ通夜は良いアイデアであると思っているが、日にちが長すぎる
      のではないか、せめて3日もやれば充分ではないかと思っている。
      
 21日 カンタンのイミグレ、カスタム、ハーバーマスターで手続をする。
      イミグレで300バーツ手続手数料を取られるのは、プーケットと同じである。
      FRPの補強は終わり、次は厚み3cm幅20cmの材木で支柱を作り、補強をしていく。
      広い場所なら簡単に出来るのだが、狭いキャビンのまだ狭い箱の裏側での仕事なので、
      汗が滴り落ちて水溜りになっている。
      ジャッキを借りてきて、上へ上げテ−パーに材木をかましてハンマーで叩いて、
      打ち付けて、補強をしていく。
      遊帆UFOは900ワットのホンダの発電機を積んでいて、工具もサンダー、グラインダー
      電動カンナ、ジグソー、丸鋸、電動ドライバーとあるので殆どの仕事は出来る。
      船内のフローリングも絨毯を取り払い、プライウッドの表面エナメル加工したもの
      (サイズが120x240x0.6cm 450バーツ)を注文する。
      寸取りさえ正確にとれれば、何とか格好がつけられるのではないかと思っている。

 22日 船内のポート側フローリングの寸取り、切断は、まあまあのできである。
      私も遊帆UFOのお陰で段々と仕事が出来る様になってきたものである。
      一番最初に湖族の末裔を手に入れたときスクリュー、一つさえ打つ事ができなかった。
      琵琶湖のヨットクラブが皆さん自分で修理されるのを、見たり聞いたりしながら
      覚えていったのである。
      遊帆UFOで日本を周っている時でも、福井さんがエンジンにも詳しく何でも頼っていた。
      日本を離れて自分ひとりになると、泣けど叫べど誰もいないので、自然と自分で
      修理するようになったのである。
      船は家と同じ為、電気屋、水道屋、大工、鉄工所、塗装屋。内装屋、エンジン修理、
      コック、洗濯、掃除、買い物、船長、まだまだ色々な役をやらなければならない。
      今夜は、ほぼ満月の為か、引き潮の時に子供達がシップヤードの中を流れている
      小さな支流に降りて蟹網を仕掛けている。
      3日ほど前、朝市であまりに旨そうな蟹が生きて藁に3匹結ばれていたのを、
      湯がいて食べようと買って帰ったが、さすがに暑く、疲れているのと、船内は
      修理の為汚く、FRPの匂いもするので、料理する気にならず、サンにあげたのである。
      夜は、例の小学生が作ってくれるレモンシェークが唯一の楽しみで、これを毎日2杯
      注文しテキーラを入れ、おかゆに簡単なおかずで夕飯を済まし、ナイトマーケットで
      果物を買い、自転車をユックリ漕いで帰ってくるのが最近の決まり事である。
      帰り道、今夜も葬式は続いていた。
      棺の前の写真は、50から60代の太ったオバチャンで代わっていない。
      もう、1週間にはなるだろう。
      毎日、宴会葬式、マージャン葬式の為、料理のこしらえも大変な事だし
      費用もかかることだろう。
      しかし、日本の様に、規模を競う様な葬式は、葬儀屋を喜ばすだけで、それに比べると、
      タイの葬式は親戚、近所に家族が総出で振舞うのがメインテーマのようであり、
      値打ちがあるだろう。
      それにしても、タイではうっかり死ぬと大変な事になりそうである。

 24日 ロンダ’マーテイン、ロナルド’ナンシーの船がカンタンに到着する。
      ロンダ’マーテインの船は事前に、ここのシップヤードと打ち合わせをしていた為
      26日に上架できるらしい。
      ロナルド’ナンシーの船はカタマランで横幅が広く、このシップヤードの台車に
      乗らないので、対岸のシップヤードで上架することになった
      夕食を近くのレストランでとるが、ロンダ&マーテインの子供、ベンとザックは
      相変わらず、ゴンタでロンダの言う事をきかないので、ロンダが追い掛け回している。
      大きな体のロンダに負けずに、頑張って自己主張をするのである。
      年は、8歳と6歳くらいの男の子だろうか、特に、下のベンは中々言う事をきかない
      子で、将来が楽しみである。
      余り大人しく母親の言う事を聞く子供より、母親を手こずらせる位の方が良いと思う。
      今日、やっと 例の葬式の主人公のオバチャンが、火葬か土葬か分からないが、
      取り合えず、出棺と言う運びになった。
      霊柩車ではなく、8トン程あるトラックに乗り、爆竹を鳴らしてもらって、家族は、バスに
      乗ってお見送りである。
      その間、道路を半分封鎖しているので、警官が出て、交通整理をしている。
      やっと、処分してもらって、オバチャンもヤレヤレという所でホットしている事であろう。
      
 25日 朝は、市場に出かけて、オカズを買ってオカユ専門のネエチャンの所へ行く。
      市場は200m四方あり、7時頃になると、オバチャン連中が買い物とお喋りに忙しい。
      日本のたこ焼きを作る鉄板で、ココナッツ入りのフワフワした卵焼きの様なものを、
      売っているオバチャンとお客のオバチャンは、話に夢中になり、いくつ卵焼きを
      袋に入れたか分からなくなり、数え直している。
      そこへ、時々お坊さんが黄色の衣を纏い、裸足で首から托鉢蜂を提げてやってくると、
      道に膝まづき、市場で買った花やら食べ物を寄進し拝んでいる。
      お坊さんの方は、アリガトウも言わず寄進した人がお祈りが終るまで待っているだけである。
      タイは、日本のような大乗仏教ではなく、小乗仏教であるのでお坊さんが仏様の代わりをし、
      信者はお坊さんを通して信仰すると言うスタイルのようである。
      一口で言えば、お坊さんは歩く仏様という感じである。
      タイのお坊さんの戒律は非常に厳しく、日本のお寺とお坊さんの様に仏教商売ではない。
      どこの寺でも出入り自由で拝観料を取る寺等一つも無いし、お寺が相談所であったり、
      学校であったり、葬式をしたりと、町内の寄り合い場所の様に使われている。
      今日は、コックピットのペンキ塗りである。
      内装もし、コックピットも化粧直しして綺麗になったが、何か殺風景なのである。
      カーテンも色の入った花柄にし、時々はランやらジャスミンやらバラでも生けようか等と
      考えている。
 
 28日 タイの新聞は勿論読めないのだが、写真を見ると、殺人現場、交通事故現場の写真が
      多く、それも血を流しているのやら死顔までハッキリと乗せている。
      そうかといって、私が見るタイ人は穏やかで、他所の国の市場等では、店の場所取りやらで
      オバチャン同士が喧嘩しているのを見かけるものだが、タイではそんな事は無い。
      明日から、もう3月、この間津波やら、正月やらといっていたのに本当に速く日が
      経つものである。
      風向きも変わってきたし、夕方には雷がなったり、何ヶ月ぶりかに雨がふったりして
      乾季から雨季に変わりそうである。
      カンタンでの修理もあと少しで終るので、水曜日位には海に戻れるだろう。
      内装の寸取りも結構うまく出来て、素人の私にしては上出来であろう。

 

 今回、修理マトメ
  主なる修理箇所
   1.船底塗装、ハルの部分ペイント
   2.キャビン内装
   3.ハルの補強
   4.電線の整理
   5.コックピット塗装
   6.リギンテンション調節
   7.ラダーのガタツキ修理
   8.デインギーカバー修理
   9.ソーラーパネルからの電線取替え
   10.VHFアンテナ取り付け
  
 購入したペイント、材料、工具類
   1.デッキ塗装のペイント Jotun Hardtop AS White 3L No.27000,20497
                  Jotun Hardtop Hardnner 0.757 No.27009,182863
                  4:1混合使用
                  Thinner Jotun 10 & 7 、770Barht
                  
   2.船底塗装のペイント Jotun Seaqueen 5l 300RM
                  Joton Seaqueen 5l 3000Barht
     プライマー  Jotun Jotamastic87 PrtA 5l &Jotamastic87 PartB 0.7little 145RM
             Hachem ESP009 Epoxy Primer 670Barht
   3. FRPのファイバーグラスクロス 7m 910Barht 
       レジン 5Little 1,000Barht           
   4. 材木(支柱) 200x35x5000mm        2000Barht
   5. 合板(床)) 1200x2400x6mmx2枚 900Barht
   6. 合板(天井) 1200x2400x3mmx6枚  1440Barht
   8. Epoxy A &B    1100Barht
   7. 塗装用具 スクリュー その他

 上架料 
   1. 揚げ降ろし  5000Barht
   2. 船台料    300Barht/Day X 13Days=3900Barht
   3. 施設使用量  50Barht x10Days=500Barht
   4. サン支払い  350Barhtx14Days=4900Barht
   5. ワークショップ&船底掃除       2500Barht
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    合計  330、000Barht=約.100,000円

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